一定のスピードとリズムで動く名入れ印刷専用機。
その機械を使いこなす職人の指先が、カレンダー1 枚 1 枚をめくっている。
めくられたカレンダーには、社名や商品名などの情報が印刷される。
これは、名入れカレンダーを仕上げるプロセスだ。
長さ2メートル、幅約80センチの印刷機。カレンダーに名入れ印刷をする専用のオフセット印刷機。この印刷機が製造されたのは昭和52年。機械に取り付けられたプレートが痛んでいて月は不明。
4台ある機械は同じような時期に製造されているのでほぼ半世紀が経過している。
「チャリンコ」といわれる少ロット専用の単色名入れ専用機を保有している工場は地元ではここだけだ。
カレンダーの最後の 1 枚、12 月に名入れが刷り込まれると、1 冊の「名入れカレンダー」は左脇におかれ、と同時に職人の右脇に高く積まれたカレンダー最上部の 1 冊を職人の右手が手際よくつかみ取る。
右斜め上から左斜め下に素早く振り下ろされたカレンダーは、印刷版の上に吸いよせられていく。
1 枚目、2 枚目、3 枚目・・・・。
一見単調と思われるチャリンコ印刷機に向かう動作は、職人一人ひとりのスタイルもあり、経験と勘、知識の積み重ねによって体得した技が一連の動作として表れる。
1 冊、2 冊、3 冊。
一定のリズムとスピードで繰り返される職人の動作から、名入れカレンダーは生産されていく。
名入れカレンダーの職人技術は、気温や湿度を考慮しながら仕事をする版画の「刷り師」のようでもある。それだけではなく、版木にはない「水と油」の加減も目見当でやらなければいけないのだから、経験がものをいう世界。
AI が使われる時代に、こんなレトロな機械を使いこなしている名入れカレンダーの印刷職人はたいへん貴重な存在といえる。
「名入れカレンダー工場」は、こんなシゴトに挑戦しようとするひとによって成り立っているのだ。